葛飾北斎 北斎花鳥画集

葛飾北斎(1760-1849)による大判花鳥画のシリーズは、「富嶽三十六景」と同時期に、同じ版元・西村屋与八(永寿堂)により出版されたと言われています。現在全10図が確認されていますが、北斎は全体を通じて、ただ花と鳥を描写するだけでなく、自然の中の風・空気・時間までを表現しようと試みています。シリーズは、静止した瞬間をとらえた図と、風によって動いた一瞬を描写した図の2種類に大別できます。10図全てに通じる計算し尽くされた構図は、北斎ならではの世界であり、描線の一本一本にも細かな精神が行き届いています。
北斎はその豊かな感性を以て、何を描いても傑作にしてしまうことを、見事に示した作品と言えます。これらの緻密な描写、大胆な構図は、幕末以降フランスを中心にヨーロッパで大きな注目を集め、ガラス器や宝飾品といった数々の美術工芸のデザインに取り入れられました。世界的に有名なガラス工房「バカラ」や「ラリック」のデザインにも北斎の花鳥画の影響を受けたものが見られます。グラフィックデザインを思わせるような構図は目に新しく、洋間に花を飾るような感覚でお楽しみいただける作品群です。